2018.3.10

国際合同講評会

2018.3.10

国際合同講評会

国際合同講評会

3月7日と8日の2日間、3名の海外ゲストをお招きして国際合同講評会が行われました。

 

講師
イシュ・パテル(アニメーション監督)
シーラ・ソフィアン(南カリフォルニア大学教授)
マラル・モハマディアン(カナダ国立映画制作庁プロデューサー)

 

 

3度目の開催となった今回も2日間にわたって行われた。
1日目は修了作品、2日目は1年次・留学生・博士課程作品の計32作について、3名の講師により講評がなされた。

 

本年度の3名の講師はいずれも大学教育や作品制作などの場において豊かな経験があり、物語の構成から具体的なアニメーション技術まで幅広いアドバイスを学生に呈した。

 

講師たちは特に自分の作品を客観的に見る必要性を説いた。作者には自分の作品世界に没頭しすぎる傾向があるため、無用な繰り返しや余分な映像を認識できなくなる恐れがある。その対策として、構成の組み立てを入念に行うことや他人の意見を頻繁に聞く重要性などを強調した。また、作者が自分の経験に基づいて作品を作ることは必要だが、その立場から一歩離れて客観視することによって初めて作品として成り立つのだという指摘もあった。

 

今回も学生全員が自分の作品について 2分程度の発表を英語で行った。インターナショナル教員の指導のもと、事前に英文原稿の作成と校正及び発表練習を行い、本番に挑んだ。英語で自身の作品を語るという課題は、英語力に個人差はあっても、英語学習とコミュニケーションスキルにおいて大きな教育的効果をもたらした。さらに、作者としての意図や作品の狙いなどを英語によって表現するという経験は今後アーティスト活動を展開するための布石にもなった。

 

本年度の国際合同講評会には、「大学の世界展開力強化事業タイプB」の一環として藝大に招聘したタイ・シラパコーン大学のチャニーサ・チャンガドベック教授もオブザーバーとして参加した。チャンガドベック教授とともに来日した同大学デコラティブアーツ学部ビジュアルコミュニケーション学科の学生 3名も藝大学生の作品の表現力と多様性に感心していた。

 

さらに、今回は初めての試みとして各講師に修了作品のなかから優秀作品を1作品ずつ選択してもらった。講師の間で長い議論が交わされた末、最終的に各々の観点から評価した作品が選ばれた。各賞が発表された際には3人とも受賞理由を詳しく説明してくれたため、受賞者だけでなく全ての学生が熱心に聞き入っていた。

 


■イシュ・パテル賞
今津良樹『モフモフィクション』
評価ポイント「映画的な様子がとても迫力があって音楽もサウンドも優れている」

 

■シーラ・ソフィアン賞
櫻田純菜『おばあちゃんのマッチ箱』
評価ポイント「個人的な題材を客観的に描くことによって見事な物語となった」

 

■マラル・モハマディアン賞
見里朝希『マイリトルゴート』
評価ポイント「虐待という非常に扱いにくい題材に挑んだ勇気ある作品」

 


講師プロフィール

イシュ・パテル/Ishu Patel

アニメーション監督。カナダ国立映画制作庁(NFB)にて25年間にわたり数々の優れた短編アニメーション作品を制作・監督。NHKやイギリスのチャンネル4との共同制作も行っている。英国アカデミー賞(BAFTA)、アカデミー賞短編アニメーション賞2回ノミネート、ベルリン国際映画祭銀熊賞、アヌシー国際アニメーション映画祭グランプリ、モントリオール世界映画祭グランプリなど、世界中の映画祭等で受賞している。南カリフォルニア大学映画芸術学部及び南洋理工大学では後進の指導育成に尽力した。南洋理工大学では実験アニメーション制作用に立体(コマ撮り)アニメーション施設も設立。米国映画芸術科学アカデミー会員。

 

シーラ・ソフィアン/Sheila Sofian

南カリフォルニア大学映画芸術学部アニメーション・デジタルアート学科教授。ロードアイランド・スクール・オブ・デザインにて美術学士号、カリフォルニア芸術大学にて美術修士号を取得。アニメーションとドキュメンタリーを組み合わせ、社会問題に迫る長編アニメーションドキュメンタリー映画1作とアニメーション短編映画6作のプロデュース、監督、制作を務めた。グッゲンハイム財団、ロックフェラー財団、ピュー・フェローシップから助成金を授与されている。2017年にコロンビアのCineToro 映画祭から特別功労賞を与えられた。

 

マラル・モハマディアン/Maral Mohammadian

モ ントリオールを拠点とする世界的に有名なカナダ国立映画制作庁(NFB)アニメーションスタジオのプロデューサー。ニューヨーク・ショートフィルム・フェスティバルやトロント・インターナショナル・アニメーション・フェスティバルで受賞したランドール・オキタ監督脚本作品“The Weatherman and the Shadowboxer”をプロデュース。短編やインタラクティブ、また先駆的なハイブリッド映像作品などを手がけている。NFB以前には、北アメリカ最大のアニメーションイベントであるオタワ・インターナショナル・アニメーション・フェスティバルのテレビ・アニメーション会議のディレクターを務めた。