2019.3.8

国際合同講評会

2019.3.8

国際合同講評会

国際合同講評会

2月28日と3月1日の2日間、3名の海外ゲストをお招きして国際合同講評会が行われました。

講師
テレサ・チェン(南カリフォルニア大学教授)
レイ・レイ (カリフォルニア芸術大学教授)
トーマス・マイヤー=ヘルマン(カッセル芸術大学教授)

今回で4度目の開催となった国際合同講評会。1日目は修了制作、2日目は1年次作品と交換留学生作品の計29作の短編作品について講評会が行われた。

本年度も学生全員が自分の作品について2分程度の発表を英語で行った。インターナショナル教員の指導のもと、事前に英文原稿の作成と校正及び発表練習を行い、本番に挑んだ。英語で自身の作品を語るという課題は、英語学習とコミュニケーションスキルにおいて大きな教育的効果をもたらすことが過去の試みを通じて実証されている。もともとの英語力の優劣は特に重要ではなく、作者の思いを海外の講師に伝えようとする経験が語学に対するモチベーションを上げ、今後のアーティスト活動を展開するための布石になる。講評会にて講師から指摘され次回の課題として挙げられたのは、日本人に多く見られる過剰な謙遜を減らし、特に海外向けに発表する場合は堂々と自作の特長を語れるようになることと、作品のなかで自分が改善したいと思う点についても建設的に前を向いた文脈に仕立てるということである。

毎年、国際合同講評会で議論されることであるが、今回も両日を通して特に取り上げられた点は、作品をどこまで見る側に理解してもらうべきなのかということである。岡本美津子教授はテレビのプロデューサーという立場から「すべての視聴者に分かってもらえる番組作り」を意識すると言い、それに対してテレサ・チェン教授はハリウッド映画の場合はターゲットとする視聴者を明確にしてからそれに沿った内容を作り上げると語った。学生作品においては、「テーマを伝えるよりも、観る側の想像力を膨らませることが重要だ」「映像を通して説明の度が過ぎるとくどくなる恐れがある」「あまりにも分からな過ぎると観客を置いてきぼりにしてしまう」などの意見が出され、作者・作品・観客のバランスや距離感を適度に設定することの難しさが議論された。

昨年度同様、各講師が優秀作品を選んだ。前回は修了作品のみを対象にしたが、今回は1年次作品からも選考を依頼し、6本の映像が選ばれた。


テレサ・チェン賞
・修了作品 キヤマミズキ「くじらの湯」
評価ポイント「ペイント・オン・グラスという伝統ある技法を使って感動的な作品に仕上げた。広く色々な人たちに見て欲しい作品」
・1年次作品 西野朝来「外に出ない日」
評価ポイント「ユーモアに溢れていてどの国にも通用する魅力を持っている」

レイ・レイ賞
・修了作品 平松悠「ひ なんてなくなってしまえ」
評価ポイント「絵の構造や色合いがギャラリーで展示するべきだと思うほどすばらしい」
・1年次作品 リーズ・レモン(フランス国立高等装飾芸術学校2018年度交換留学生)「テーブルの向こう側」
評価ポイント「コンセプトから表現方法まで非の打ち所がない完成度の高い作品」

トーマス・マイヤー=ヘルマン賞
・修了作品 ささきえり「うめぼしパトロール」
評価ポイント「平凡で日常的な出来事こそが人生においての醍醐味である、という深い真実を見事に伝えている」
・1年次作品 川上喜朗「雲梯」
評価ポイント「幼い頃に体験した切なさを大人の視点から正確に表現できている作品」

加えて、講師全員からの特別賞として、佐藤桂「A Pawn」と全振圭「死の商人」の2作が選ばれた。


講師プロフィール

テレサ・チェン(南カリフォルニア大学教授)
南カリフォルニア大学映画芸術学部アニメーション&デジタルアート学科長。アニメーションやVFX制作業界で30年以上プロデューサーとして活躍した経歴を持つ。携わった長編映画は『シュレック フォーエバー』『マダガスカル』『バットマン & ロビン Mr.フリーズの逆襲』『トゥルーライズ』など多数。

レイ・レイ (カリフォルニア芸術大学教授)
グラフィックデザイン、イラスト、短編アニメーション、グラフィティ、音楽など、さまざまなジャンルで活動する。2010年、作品『This is LOVE』がオタワ国際アニメーション映画祭最優秀物語短編アニメーションを受賞。同『Recycled』は2013年アヌシー国際アニメーション映画祭短編部門の公式セレクション入選、オランダ国際アニメーション映画祭にてノン・ナラティブ短編グランプリ受賞。2018年よりカリフォルニア芸術大学(CalArts) 映像・ビデオ学部実験アニメーション専攻のファカルティに加わる。


トーマス・マイヤー=ヘルマン(カッセル芸術大学教授)
1989年に映像制作スタジオFilm Bilderを創設。以降、同スタジオにて多くの作品のプロデュースや監督を務め、手がけた作品は世界中の映画祭で200以上の賞を受賞している。2000年からドイツ・カッセル芸術大学にてアニメーションの教授も担っている。