平成28年度ASEAN文化交流・協力事業(アニメーション・映画分野) | » Home

背景とねらい

近年の日本映画は、国際映画祭でのノミネートや授賞作品の本数からいえば世界的に一定の評価がされているといえる。その背景には、黒澤明や溝口健二、小津安二郎といった世界的にも高く評価された監督らが活躍した、映画黄金期といわれるスタジオ撮影時代に培われた映画表現技術を継承しながら、デジタル大国として先進的なデジタル技術を積極的に映像制作に取り入れてきたという経緯がある。そのフィルム制作からデジタル制作への過渡期に、国立大学で初の本格的な映画教育・研究を行う拠点として平成16年に設置されたのが東京藝術大学大学院映像研究科である。東京藝術大学大学院映像研究科は、過去数年にわたりデジタルシネマ環境に適した、新しい映画制作に元づく映画教育システムの研究をおこなってきた。同研究の成果の一つとして、「デジタルシネマ制作ワークフロー教育マニュアル」を2016年度に作成した。本プログラムはこの教育マニュアルを使用した初のデジタルシネマ制作ワークショップである。

 本プログラムの開催国であるマレーシアは、世界的な映画水準からみると、ツァイ・ミンリャンなどの一部の監督の世界的な知名度を除いてまだ映画の知名度は低い。映画の発展途上の段階であるといえる。しかし、近年マレーシア政府が主導しておこなわれているジョホールバル地区の大規模な都市計画である『イスカンダル計画』の一部として、エンターテイメント業界が参入したことでその状況が変わりつつある。アジア最大規模を誇るPinewood Iskandar Malaysia Studios(以下PIMS)の建設や、国際共同制作における助成金の優遇措置など、マレーシアはアジアの映画分野においてその存在感は大きくなり、今後注目されるべき存在となりつつある。また、言語的にもマレー語、英語、中国語という幅広い言語が国内で使用されており、世界マーケットの最大の障壁である言語問題の壁が低いことも特出すべき特徴である。また、アジア経済大国であるシンガポールとの地理的利便性も無視はできない。経済や文化、人材の交流は既に活発に行われており、今後のマレーシアの映像文化・映画産業が多くの可能性を持っていることは疑いの余地がない。

 既にマレーシアと日本の民間のレベルでの連携は始まっている。日本のポストプロダクション大手のIMAGICAはPIMSに進出し、現地法人Imagica South East Asiaを設立し既に数年が過ぎている。同社は現地での人材育成にも積極的であり、昨年に引き続き今回の事業も彼らの多大な協力をえてPIMSでのワークショップ開催を実現できることとなった。

本事業は、大規模な撮影スタジオと最新のポストプロダクション施設が整った最高の環境の中で、東京藝術大学が考案したデジタルシネマ教育マニュアルをもとに、デジタルシネマ制作をおこなうことで映像技術表現と映画の創造性の更なる可能性を体現することを目的とし、さらにはマレーシア、シンガポールの若者達に日本文化への理解を深めてもらい、日本を代表する監督、撮影監督、美術監督、編集者の指導のもと映画制作の技術と思考、そして映画制作に対する情熱を直接体験してもらうデジタルシネマ制作ワークショップを実地した。ワークショップの最終成果物として、10分程度の短編映画制作を4本制作した。

実施体制

日本側
講師 諏訪敦彦(監督/東京藝術大学大学院映像研究科教授)
柳島克己(撮影監督/東京藝術大学大学院映像研究科教授)
磯見俊裕(美術監督/東京藝術大学大学院映像研究科教授)
宮島竜治(編集/東京藝術大学大学院映像研究科非常勤講師)
講師補佐 森﨑真実(撮影助手)
池田啓介(照明助手)
山田 祐介(編集助手)
ディレクター 横山昌吾(東京藝術大学特任助教)
ディレクター補佐 松井 一生(フリーランス)
プロジェクトプロデューサー 岡本美津子(東京藝術大学教授)
通訳 江口麻子(東京藝術大学特任助教)
企画・運営 東京藝術大学大学院映像研究科
全体統括 公益財団法人ユニジャパン
事業主任 前田健成(国際事業部情報発信グループ統括プロデューサー)
事業担当 本多麻由(国際支援グループ)

 

マレーシア側
現地コーディネーター Imagica South East Asia(担当:日下健太郎)
田中直毅(ポストプロダクション担当 件 通訳)
Izmil Idris (制作部)
村岡伸一郎(制作部補佐)
特別講師 藤本賢一(録音技師)
石坂紘行(サウンドデザイン)
参加教育機関 Multimedia University(マレーシア)
LASSALE College of the Arts(シンガポール)
現地協力 Pinewood Iskandar Malaysia Studios(PIMS)
Red Circle Projects

 

シンガポール側
講師 浦田 秀穂(撮影監督/ LASALLE College of the Arts教授)
参加教育機関 LASALLE College of the Arts

講師プロフィール

  • 諏訪 敦彦 (監督 /東京藝術大学大学院映像研究科教授)

  • 柳島 克己 (撮影監督 / 東京藝術大学大学院映像研究科教授)

  • 磯見 俊裕 (美術監督 / 東京藝術大学大学院映像研究科教授)

  • 宮島 竜治 (編集 / 東京藝術大学大学院映像研究科非常勤講師)

  • 浦田 秀穂 (撮影監督  / LASALLE College of the Arts教授)

  • 藤本 賢一 (録音技師)

  • 石坂 紘行 (サウンドデザイン)

実施概要

《事業名》

『デジタルシネマ制作ワークショップinマレーシア』

《日程》

平成28年10月31日 — 平成28年11月5日

《場所》

Pinewood Iskandar Malaysia Studios (PIMS)

  • Film Studio3 (セット撮影場所)
  • PIMS所有敷地内(ロケセット撮影)
  • Imagica South East Asia(ポストプロダクション作業)
  • VIPルーム(上映・講評会)

《参加者》

受講生:26名

Multimedia University (15名)
LASALLE College of the Arts(6名)
東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻(5名)

ワークショップの詳細

《1日目:ガイダンス》

ワークショップ冒頭では、フィルムスタジオ3にて、ワークショップ講師の紹介、参加者の自己紹介、ワークショップの趣旨と内容についての説明、ワークショップのスケジュール、参加者の班分けなどのガイダンスを行った。各班のメンバーは、運営側で事前情報をもとに26人の学生を6人4班(A班、B班、C班、D班)と美術領域2人に班分けをした。撮影では、A班とB班を一チーム、C班とD班を一チームとして、チーム内で同じ役者を交互に使用することにした。A班がメインで撮影するときは、B班がサポートに入りお互いの撮影をチームごとで助け合うようにした。

◎デジタルシネマ制作ワークフロー教育マニュアル

ガイダンスの後半では、本ワークショップで使用する『デジタルシネマ制作ワークフロー教育マニュアル』に記載されている「アジャイル式デジタルシネマ制作ワークフロー」※3の説明をディレクターの横山より行った。今回のワークショップに重要な「対話」とその方法と効果についての説明をした。

◎撮影制限

ワークショップでは、撮影講師の提案によりカメラ撮影に関する制限を設定した。撮影には下記の3つの制限が参加者に課せられた。

  1. カメラレンズは35mmレンズのみを使用
  2. 白黒撮影
  3. 撮影モニターの使用不可

 この制限の目的は、参加者に「撮影の制限内でどのような映像表現が可能か」ということを積極的に考える環境をつくることである。参加者は35mmレンズの特性や撮影範囲、白黒での光の映像表現方法について考えることが要求され、撮影映像の確認ができない状況での撮影現場を体験してもらった。

◎プリプロダクション

ガイダンス後半では、参加者は各班に分かれてそれぞれの映画制作の担当と映画制作の進行について話し合いを行った。ワークショップでの主な役割は監督、撮影、照明、編集、録音、助監督である。役割については、規定をつくらずシーンごとに役割を変えることも可能とした。プリプロダクションでは、各班の主体性に任せた。脚本については各班内で話し合い、ストーリーボードの作成、撮影現場のロケハン、役者を使用したリハーサルなど、各班で自由にスケジュールをつくり行動できるようにした。撮影志望者と編集志望者を中心に、各助手達がワークショップで使用する機材の扱いについて説明する時間も設けた。

《2~6日目:撮影と編集》

2日目から6日目までは、運営側が作成した各班のタイムスケジュール※4に沿って短編映画制作を行った。本ワークショップの映画制作は、撮影と編集を同時に進める「アジャイル式デジタルシネマ制作ワークフロー」に沿って行われているので、撮影と編集が同時に進行する。撮影方法は、時間によりメイン班とサブ班が同一チーム内で入れ替わりながら行われた。撮影と編集間のデータのやりとりは、シーン撮影ごとに行うようにした。データのやりとりは、データの紛失などが起こらないように各班で責任者を決めるように指示をした。撮影部分である役者の衣装、出演のタイミング、小道具の管理などは基本的に学生達が行い、撮影中のタイムマネージメントは運営側で管理をした。撮影照明や演出の講師達は各チームの撮影現場を見るだけで、現場での具体的な指導は極力しないよう運営側から依頼をした。

運営側が作成した図面通りの美術セットを事前に設営し、撮影を行った。セットでのベースライトの設置は、事前に撮影照明講師の指導のもと行った。参加者は、ベースライトを基準に各自でシーンの狙いに沿った照明表現を行うようにした。また、美術セットの一部の壁を取り外しできるようにした。これは、セット内でのカメラポジションの幅を広げるだけでなく、美術セットだからこそできる撮影方式を参加者が経験できるようにする狙いがある。セット内の家具は運営側で用意をし、その他の小道具は各班で自由に用意させた。美術担当は、各班の監督らと話し合い、小道具の位置などを管理した。美術セット撮影には、美術講師である磯見氏が、セットの動かし方や小道具の準備方法、配置の仕方など、セット撮影の考え方を美術学生だけでなく参加学生全員に指導した。美術セットは、シーン2、シーン3、シーン5の3シーンである。昼夜両方の異なった照明セッティングを経験させるため、シーン2の時間は夜、シーン3、シーン5は昼と撮影照明の講師の意見を取り入れて設定した。セットでの撮影作業は、基本的には学生達が主体となり、照明助手らが照明セッティングをメインに撮影の補佐・指導をしながら進めた。

◎ロケーション撮影

ロケーション撮影は、2種類のロケーションで行われた。マングローブの森とカフェのシーンである。マングローブの森はPIMS周辺のマングローブの森とした。森の内部の撮影範囲は、基本的には徒歩圏内であれば撮影可能とした。マングローブの森はシーン1、シーン6であり、物語の内容から演出小道具としてスモークマシンの使用も許可した。シーン4のロケセットであるカフェは、PIMS建物内のカフェのテラスを撮影場所とした。カフェの机や椅子などの配置は各自で変更することが可能である。ロケーション撮影では、照明機材はレフ版など最低限の照明機材の使用のみとしている。これには、学生達にカメラポジションとカメラ操作に重点を置いて経験してほしいという狙いがある。撮影助手達にはそれらのワークショップの意図を理解してもらいながら、補佐・指導をしてもらった。

◎編集

編集担当者は、撮影素材を受け取りながら、撮影と同時に編集作業を進めていった。編集講師は、ある程度のシーンが完成した段階で学生達の編集作業の確認をした。編集講師や編集助手は、学生達に具体的な編集の指示をするのではなく、映像表現に関してのアドバイスや技術的な補佐をした。編集講師が、ラッシュ素材の確認とそれぞれの編集者の意図を共有するので、編集学生にはより現実的な編集アドバイスができる環境となっている。編集室はISEAのポストプロダクションの一部を使用、各班に用意された。技術的なサポートは、ISEAのスタッフが担当した。今回のワークショップでは整音やグレーディングの時間を設けなかったが、グレーディングは、撮影担当者と編集者が相談して時間内で行うことが可能であれば行えるようにした。整音も、編集者が行える範囲での整音を各自で行うように指導した。  1日の撮影の終わりには各編集室に班員全員が集まり、編集結果を上映し、制作過程の状況を班メンバーで共有した。編集者は、編集ラッシュ上映前に編集の意図や現段階での作品の問題点などをプレゼンテーションし、それから編集ラッシュを行った。編集結果を受け、次の撮影シーンの演出、撮影方法や現段階での問題点の解決案など、再撮影も視野に入れて話し合う時間を設けた。ここでのスタッフ間の映画制作の知識共有は重要な意義を持った。また、最終日は撮影を行わず編集作業の時間とした。編集の学生は前日までに監督や他のスタッフの意見を聞き、最終的な作品の編集判断は編集者が決めるようにして作業を進めていった。

◎ラッシュ・編集講評会

撮影終了後の編集ラッシュの前に、各班とも撮影照明講師らによる当日の撮影素材の講評を行った。撮影素材を見ながら映像表現としての狙いが成功・失敗しているところ、撮影技術的に不足している部分や異なったアプローチ方法の提案など、実際に学生が撮影した素材について各講師らがフィードバックを行った。撮影現場では学生の撮影に介入せず、撮影の結果である撮影素材を具体的に指摘してもらうことで、参加者達に失敗した理由を考える機会を与えることが狙いである。特に今回の制限である35mmレンズのみの使用や白黒表現に ついては、講師らからも繰り返し、その映像表現の意味を考えるようにとの意見が出ていた。制作知識の共有だけでなく、講師らによる具体的な技術講評も行うことで、学生達は撮影技術表現について、より深い知識を獲得することが可能となった。

◎完成上映・講評会

作品完成講評会はPIMSのVIPルームを使用した。上映スケジュールは、A班、B班、C班、D班の順番で行われた。各班のメンバーは上映前に担当領域を紹介した。全作品の上映後、全講師による作品講評が行われた。作品の映像表現に関する技術的な表現だけでなく、グループワーク体制やコミュニケーション円滑具合など各グループの映画制作の取り組み方についてまで、講師一人ひとりからとても丁寧なコメントが寄せられた。講評の最後には、講師らにより最優秀作品賞の投票が行われた。講評後の懇親会では、学生が各講師らに、映画製作や作品に関する質問や問題について積極的に話していた。懇親会の最後には、ディレクターの横山より最優秀作品賞が発表され、C班の学生には記念品の贈呈が行われた。ワークショップ に協力してくれた現地スタッフや俳優達に感謝を述べ、これですべてのプログラムが終了した。

 

まとめ

今回のプログラムの受講者の多くは、異文化異言語のクルーと映画制作をすることの難しさを実感しただけでなく、映画制作での意思疎通の重要性を経験できた。今回の制作ワークフローである“アジャイル式デジタルシネマ制作ワークフロー”は、映画制作者同士が“対話”をしながら制作することで映画知識と映画制作の暗黙知を共有することによる強調学習の効果が期待された。それぞれの技術レベルや映画的な経験値に差があってもお互いから学ぶことは多い。編集ラッシュ後にメンバー同士で、編集と撮影の両方の観点からその段階での作品の問題点とその解決方法について意見を出し合い議論をすることで、色々な知識や考え方に直接ふれ、それらを互いに理解しながら自分の意見を伝える経験ができたことは大変重要であったといえる。今回、異なる生活様式から生じた考えの相違の一例に室内での照明設計の考えかたがあった。シンガポールと日本では夜の室内の明るさに対して考え方が違う。これは、シンガポールは建物同士も近く、夜は外からの照明の光が強く、日本は室内のほうが強い。この違いにより、夜の光の表現にも大きな違いがあることがわかり、受講者だけでなく講師たちも自分たちの常識が物語の状況によっては常識でないことがあると気がつかされる場面があった。これを単なる“環境の違い”と捉えるのでなくこの“違い”が映画表現や物語にどのように影響をするのか考えるキッカケとなっていた。

 MMUの多くが、他大学との技術と映画知識の大きな差を実感していたことがアンケート結果から読み取れることができる。MMUの学生たちが、レベルの差を実感したことは大変意味深い。実際にも、他の二校に比べ技術的な知識の差はあった。今回のプロジェクトでの共同作業により彼ら自身がその差に気がついたことで、今後の彼らの映画制作への取り組み方が大きく変わることを期待する。

 ラサール芸術大学の学生のほとんどが撮影技術や機材に関する知識を習得することができたと感じている。これは撮影講師の提案により撮影レンズと白黒画面、モニターの使用を制限したことが大きく影響したといえる。シンガポールの学生はある程度の撮影知識や技術を既に習得していたが、今回の撮影制限によりレンズや光のより深い知識と考察を彼らに要求した結果ともいえる。

また、日々の撮影終了後に行われた講師によるラッシュ講評も教育的に大変有効であった。映像表現として成功した部分よりもむしろ失敗した部分にフォーカスをおいて講評したことで、失敗した理由やより適切な映像表現について各学生が考えて、次の撮影時に表現と技術的な修正が常におこなわれていった。 講師らも学生たちの技術・表現的な進歩に大変驚いていた。

 今回のワークショップは、アンケートからも映画の技術的・知識的な習得に対して大きな効果があったことが読み取れるが、今後より同等のワークショップを充実させるために幾つかの改善点もある。編集講師の意見では、編集にかける時間が少な過ぎる問題が点あげられた。編集時間の不足は、作品の完成度に大きく影響を与えるばかりでなく、ワークショップで重要な役割をはたす「対話」の時間が十分に確保できなかったことを意味している。参加者としては、「対話」の充実よりも作品の完成を目指してしまうのは仕方がないことであるが、教育という観点からはスタッフ全員が集う「対話」の時間をより充実させることが必要であり、そのためには編集時間の十分な確保が今後の課題である。今回は、全6シーンの脚本を運営側で用意した。脚本の分量についても講師数名からもう少し分量を少なくしたほうがゆとりある撮影現場になったのではないかという意見もでた。「対話」の充実と編集時間、現場での創作時間という観点からも脚本の分量については、今後は改善をおこなっていきたい。

 班内の役割に関しても、希望する役割にならなかったことによる参加者のモチベーションの低下や、不慣れな役割を担ったことで技術的に未熟な部分が作品に影響を与えてしまったなどの問題もみられた。今回は、事前の情報をもとに班員を構成し、各役担当については各参加者の主体性に任せておこなった。しかし、ワークショップ参加者のモチベーションや参加目的を考慮すると今後は担当の割り振りついても運営側が介入したほうがより充実したワークショップとなると考えられる。これら指摘された問題点・改善点については、今後改善をおこなっていく。

 PIMSというアジア屈指の撮影スタジオを映画撮影に使用にする経験も学生にとっては大変貴重なものであり、それ以上に日本国内でもこれだけの第一線で活躍する講師が一同に集い6日もの間、共に映画制作について意見をしてくれるワークショップは日本でもほとんどおこなわれない。参加学生たちの多くが、この日本を代表する映画制作者らと一緒に映画制作について話し合う機会を存分に活用し、技術的なことだけでなく日本映画についての質問も積極的にしていた。日本講師らの意見に真剣に耳を傾け真摯に映画制作に向き合っている姿があった。

 学生同士の交流も闊達におこなわれていた。ワークショップ後には学生同士で外出をしたり、撮影現場では、撮影技術のアドバイスや機材の使用方法を教えるなどの場面がみられた。

 ワークショップの4本の完成作品が、当初の予想以上に高いクオリティーの作品が出来たことにスタッフ講師とも驚きを隠せなかった。6日間という限られた時間と撮影環境にも関わらず参加者の日々の進歩には目を見張るものがあり、講師たちも参加者の積極性と勤勉さその熱心な態度に徐々に感化されていたのが大変印象深かった。

 今回、多くの参加者から本プログラムに参加できて本当に良かったとの声が多くとどいた。このワークショップがここまで充実したものになったのは、マレーシア側のスタッフの熱意と献身さ、そして、多忙にもかかわらず貴重な時間をかけて参加していただいた諏訪氏、柳島氏、浦田氏、磯見氏、宮島氏、藤本氏、石坂氏ら講師の方のお陰に他ならない。ここに感謝致します。