講座アーカイブ
第1部 CGアニカップ 日本×EU 模擬試合
DoGA[1]代表のかまだゆたかさんと東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻学生で、CGアニカップ[2]に参加経験のある今林由佳さんが司会を務め、日本とEUの代表チームを想定した模擬対戦を行いました。
(講座の冒頭での岡本教授によるあいさつ)
(司会のかまだゆたか氏と今林由佳さん)
◇競技方法
競技は柔道の団体戦のように、先鋒戦から大将戦までの5試合行います。各試合では、両チームから1作品ずつ上映し、その優劣を判定します。このとき、各チーム5作品のうちのどの作品を上映するかは、試合当日の会場で、チーム内で相談して決めます。作品の組み合わせは、勝敗に大きく影響します。
(日本チーム代表による上映作品のタイトルの発表)
◇作品上映
上映する作品が決まったら、チームの代表がタイトルとその理由を発表します。
日本チームの作品の上映終了後、対するEUチームの代表が、対戦させる作品を決め、発表します。作品上映が終ったら、制作者のPRメッセージがビデオで流れます。
(作品の上映)
◇拍手くん
アニカップは審査員の評価だけではなく、観客の拍手や声援の大きさも判定の要素になります。各作品上映後の拍手の音量を測定し、その場で判定を出す「拍手くん」というシステムが導入されています。観客は気に入った作品に対しては、拍手だけでなく、歓声など含めて大きな音を出せばいいのですが、逆に気に入らなかったときにブーイングをすると、それも得点になってしまいます。音量は「測定中」という表示がスクリーンに投影されている約5秒間だけ行われます。
(拍手くんの測定中)
◇審査と勝敗
審査員は、作品と作者によるPRも含めて判断します。日本チームの作品が優れていると思ったら赤いライトを、EUチームが優れていると思ったら青いライトを上げます。観客席の拍手の音量も測定し、その結果が表示されます。そして、ふたつの判定による勝敗結果が表示されます。その後、審査員がコメントを述べます。
先鋒戦、次鋒戦、中堅戦、副将戦、大将戦と5試合をおこなった結果、3勝以上したチームが優勝となります。
(審査員の判定)
(審査員による判定結果)
(審査員によるコメント)
(判定結果)
(結果発表)
模擬試合では、日本チームが優勝となりました。
第2部 CGアニメの黎明期からCGアニカップまでの道程
岡本美津子:かまださんが代表をつとめるDoGAは、関西を拠点に24年間にわたり「CGアニメコンテスト」を開催していますが、つねづね聞いてみたいことがたくさんありました。CGアニメコンテストはなぜ24年間も続いていて、インディペンデントのアニメーション作家のネットワークの中心になっているのか。さらに、CGアニカップやCGアニメコンテスト[脚注3]、それからDoGA自体をどのように運営されているのか、今日はその謎を明らかにできたらと思っています。
かまだゆたか:今日は、DoGAが設立以来行ってきたさまざまな活動の具体的な事例を話しながら、プロデューサーの話を盛り込んでいきたいと思っております。
DoGAを設立した1985年当時、私は大阪大学の3年生でコンピュータクラブの会員でした。高校3年の時に自主映画づくりに参加したことがきっかけで、映像制作に目覚め、一時は映画監督になりたくて映画もつくっていました。
しかし30年前は、映像作品をつくる環境やテクノロジーが今と全く異なり、ビデオカメラは存在せず、8mmフィルムの時代でした。また役者やカメラマン、進行といった何人もの人を集めないと実写映画はつくれませんでした。
映像は見るよりもつくる方がずっと面白い。けれどもつくるには大変過ぎたんですね。もっと簡単につくれるようにすれば、一般の人も映像作品をつくるようになって、従来のテレビや劇場の映画とは違った新しい映像文化が生まれるのではないか、そう思って設立したのがDoGAです。
◆プロデューサーと目的意識
DoGAの目的を紹介したところで、プロデューサーは目的を明確に持たなければいけないという話を最初にしておきます。これは映像制作だけでなく、プロジェクトやイベントのプロデュース一般の話にも当てはまります。
まず、目的が明確だとわかりやすいし伝わりやすい。映画でもイベントでも、何がしたかったのかよくわからないものをときどき見かけますが、あれはやはり目的やコンセプトが企画段階で迷走した結果だと思います。
次に、成果が明確になる。目的が明確なら成功したかどうかも自然に明確になります。逆に言うと、やたら壮大で漠然とした目的しかない企画は、たいてい成果が出ません。
さらに目的を明確にすると、プロデューサーに迷いがなくなる。というのは、何か問題が発生したら、目的に合うか合わないかで判断すればいいからです。
プロデューサーは常に難しい判断に迫られるというイメージがあるかもしれませんが、実は私自身、イベントの企画や実施において、どっちにしようかと迷うことはほとんどありません。聞かれたら大体すぐ即答します。判断に必要な情報や知識が必要なときは、誰々に聞けと答えます。かなり微妙なケースでも、「そんなんAに決まってるやん」と即答することが多い。微妙なときほど結局、どっちを選んでも大差はないのです。むしろ判断を迷うこと自体がデメリットになります。判断できずに迷っていると、周りの人間が不安になりますし、判断の遅れが進行の遅れにつながって、ものすごく大きなデメリットがあります。だから、ある程度の非難は覚悟して即決するのが必要だと思います。
以上のように、プロデューサーが目的意識を持つことは、対象者に意図を伝えるためにも、その成功の可否をはっきりさせて成果を出すためにも、そしてプロデューサー自身が物事を判断する上でも非常に重要なことです。
◆DoGA黎明期—CGアニメ制作までの長い道のり
DoGAを設立した頃に話を戻します。普通の学生にすぎない私が、いきなり「おれは新しい映像文化をつくるぞ!」と言っても、無謀でばかげていて、それはいきなり「おれは海賊王になる!」というのと大体似たようなものです。
ただ、私には映像制作を簡単にする斬新なアイデアがありました。それはパソコンを使うということです。役者やカメラマンを全部パソコンで自動化して、カメラや編集機、プロジェクターなどの機材もパソコン1台で完結したシステムにしてしまえば、個人でも映像が簡単につくれるようになる、つまりこれがCGアニメです。
それのどこが秘策なんだ、映像制作でパソコンを使うのは当たり前じゃないか、と皆さん思ったことでしょう。大体世の中は、実現する前は、「そんなのできるわけない」と言っといて、実現した後は、「そんなの当たり前や」と言うんですね。
80年代なかばのCGの世界は、1982年にディズニーの『トロン』が世界初の本格的CGアニメといわれたように、カット1秒に数千万円かかる、大企業や一部の研究所が制作するものでした。つまり自主制作映画をCGで作ろうなんて、いわば自主制作映画でトム・クルーズを主演にしようというのと同じで、CGを使う発想すらない時代です。そもそもパソコンの性能が今とくらべて格段に低く、シャープのX68000という当時けっこう高性能といわれたパソコンでさえ、メインメモリが1メガバイト。さらにハードディスクはなくてフロッピーディスクで、つくった絵を保存するところもない。こんな状態で、個人が手軽にパソコンで映像をつくろうなんて、結構無茶な話だったんです。
私が初めて本格的にCGアニメをつくったのが1985年。8ミリフィルムカメラによるクレイアニメのコマ撮りのような方法でCGアニメをつくることに成功しましたが、これではまだ一般の人が気軽につくれるようなレベルではありませんでした。
ハードだけでなくソフトの面でも当然問題があって、CGアニメ制作ソフトそのものが存在しません。そこで、ないのだったらつくってしまえということで、DoGAを設立してすぐに日本初のパソコン上で動作するCGアニメ制作ソフトの開発に取り組みました。完成までに時間がかかり過ぎる大きな1つのシステムではなく、小さなアプリの集合体で分業制にしました。システム開発と並行して作品もつくっていくことで、実用性があがって改良もすすみ、プログラム開発のモチベーションも上がりました。
DoGAの設立の目的は、誰でもCG制作ができるようになることですから、開発したソフトをほかの人に使ってもらうことを前提に開発し、そのマニュアルの様式も統一しました。
さらに開発に入る段階で、パソコン専門誌で連載を始めて、開発したソフトの発表の場を用意しました。開発したソフトが雑誌の数万人の読者にすぐ知られて使ってもらえたことは重要だと思います。
この連載名が「デジタル世代のクリエイター達への提案」。つまり、クリエイターたちにパソコンを使って映像制作を提案しているわけです。我々が取り組んだパソコン用CGアニメシステムのものすごく長い道のりがちょっとわかっていただけたのではないかと思います。
こういった他に、CGアニメ作品を分類して表示する汎用的なマルチウィンドウシステムも開発しました。遊び半分に開発したアプリまで含めると100種類ぐらいあったと思います。それを連載している雑誌の付録にフロッピーディスクを付けて配布しました。日本産のフリーウェアとしてはだいぶ初期だったと思います。その結果、日本でCGアニメをつくる人の7、8割ぐらいがCGAシステムのユーザーという状況がしばらく続きました。ユーザーが非常に喜んでくれて、数千万円の単位で寄付が寄せられ、それで法人化しようということになり、1993年、大学のクラブの延長としてやっていたDoGAを法人化しました。公益法人を目指したんですが、当時NPO法というものがまだなかったので、株式会社にしました。
◆プロデューサーの資質とは
これだけ偉そうなことを言っておきながら、実は私はCGAシステムを1行も開発していません。私がしたのは、まず目標を明確にして、部員たちを説得して参加してもらって、雑誌社と交渉して雑誌の連載を決め、みんなが集まる部屋を用意し、雑誌の掲載料で運営し、メーカーと交渉して開発用のパソコンを揃え、システムの仕様を検討してマニュアルをつくって、雑誌の連載をするという、ほとんど雑用です。つまり、これがまさしくプロデュースだと思うんですね。
プロデューサーとクリエイターの違いは、クリエイターは自分でできることを自分で実現する。でもプロデューサーは、自分ができないことを多くの人の協力を得て実現する人のことです。
プロデューサーが多くの人を動かす以上、人のネットワークが非常に重要です。「かまださんの企画ならやりましょう」とか、「かまださんに頼まれたらしゃあないな」と言ってくれる人が周りにいるかどうかが、プロデューサーの力だと思います。
次に、よい人であること。プロジェクトが一つ終わった時に、「ひどい目に遭った。あいつとは二度と仕事はしない」と言われると、どんどんネットワークが切れてしまってできることが少なくなってしまう。でも、世の中には自分の利益ばかり優先して人をだます悪いプロデューサーも実は結構多いので、よい人というのが事実がどうかわかりませんが、それは信じたいですね。
ほかには、こまめで世話好きで気がつく人。プロデューサーの仕事は雑用が多いし、結局はクリエイターのお世話係になるパターンが多いです。
さらに、中途半端な人。特別な才能に秀でている人はクリエイター側に求められる資質だと思います。私も元々は映画監督になりたかったし、一応クリエイターの端くれでした。でも、本格的な才能はないと自覚していましたから、クリエイターたちの世話をして、もっとすぐれた作品をたくさん世に生み出すほうがいいという思いでやっているところもあります。
だから、大学で自分より才能がある人が周りにたくさんいて、クリエイターとして将来食っていくのは無理だと思った人は、プロデューサーに転向するのは十分ありだと思います。優秀なクリエイターのネットワークが自然とできるでしょうし、クリエイター出身であれば彼らの痛みや喜びもわかるので、きっとよいプロデューサーになると思います。
あとは、アイデア力。試行錯誤の過程で失敗はつきものですが、トラブルが起こってあきらめるのではなく、じゃあ、こうしようという別の代案を立てるアイデア力がプロデューサーには必要だと思います。
最後に、お金を集めることができる人。私はお金集めが非常に苦手ですが、ぜひ皆さんには資金を集められるプロデューサーになってほしいと思います。
◆CGアニメコンテストの誕生
再び、DoGAの活動の話に戻ります。こうしてCGAシステムの開発は進みましたが、作品をつくっても当時は発表する場がありませんでした。これじゃいかんということで、CGアニメコンテストを開催することにしました。コンテストをしているとアナウンスすれば、それを目標にしてみんながつくるようになると思ったのです。第1回はほとんどが内輪で、審査基準もCGで動いていれば入選というレベルでした。それでも、コンテストの入選結果を連載中のパソコン専門誌にカラー特集で紹介したら、翌年から外部からの作品がどんどん集まるようになりました。
最初のころのCGアニメコンテストは、いろんな団体の成果発表会という面が非常に強かったです。応募者も理系の人間ばかりでした。しかし、しばらくすると文系もパソコンを持つようになり、ストーリー性の高いCG作品が生まれ出しました。さらにコンテストが始まって10年ぐらいたったころから、芸大生がぽつぽつ参加してきて、映像センスを問う作品も生まれてきました。こうして毎年応募者が増えて、作品のクオリティも上がってきました。
しかし、世の中の自主制作CGアニメに対する認識は極めて悪かったのです。やっぱりCGは劇場映画の中で使う非常に高価なものという認識で、パソコンでつくった自主制作CGアニメを見せても、「へえー、パソコンでCGアニメもつくれるんだね」とか、「何かしょぼいね」という反応でした。我々の方も、「これはパソコンでつくっていて、アマチュアなので…」と一々言い訳をしながら作品を見せていました。「個人がパソコンで、映像つくってどうするの。一体何の意味があるの」と、ずっと言われ続けました。
ですから、当時のCGアニメコンテストの目標としては、自主制作映画に追いつく。ジャンルの存在を知ってもらう。そして、「そんなことをして何になるの?」と言われないようにする。それから、アマチュアだと言い訳せずに作品が見せられる。それがCGアニメコンテストの一つの目標でした。
しかし、新海誠さんが『ほしのこえ』を発表したことで一気に世間の認識が変わりました。おかげさまで、CGアニメやクリエイターに対する世の中の認識が変わって、日本の重要な産業だと、その人材育成が必要だと言ってくれる、そんな世の中になってくれました。
先ほどの第1部でお見せしたCGアニカップの場合は、CGAシステムやCGアニメコンテストのように、1つの明確な目的があったわけではなく、いろんなアイデアの集合体です。
◆なぜDoGAは続いてきたのか
最後に、DoGAの運営について。活動は基本的に赤字です。DoGAでは営利活動として、CGに関係のないシステム開発の仕事を常時手がけていて、それで出た黒字をこういった非営利活動に投入しています。ということで、CGアニメの振興活動をしても、これっぽっちも儲からない。かつ、ものすごい数の失敗ととんでもない苦労の連続。こんなことを30年近く続けてこられた理由には、高い志や失敗してもやめない不屈の精神、といったようなものはありません。
好奇心、これが極めてシンプルな動機です。DoGAの最初の目的は、単に自分が映像をつくりたかったけれども、できない。じゃあ、つくれるようにしようという思いです。
CGアニカップにしても、国対抗の団体戦、CGアニメのオリンピックができないかなと思って、こうしたらできるかもと思ったら、やらずにはいられない。
ですから、プロデューサーを目指す皆さんは、まずは自分でやりたいことを動機にするべきだと思います。上からやれと言われたからやる、そんな動機でやっていたらつまらないし、ろくなものができない。お金もうけのためなら、それでぜひ頑張ってほしい。世のため人のためにやるのもモチベーションは続くけれど、でもそれだけでは非常に堅苦しいですね。
幸いなことに、プロデューサーは非常に夢がある仕事です。夢を実現することがプロデュースです。ですから、まずは自分なりの、あんなこといいな、できたらいいな、を探すところから始めていただければと思います。
岡本:ありがとうございました。プロデューサーはよい人、という言葉が非常に心に残るんですが、かまださんはCGアニメコンテストの参加作家に対して非常に教育的なプログラムを組んで、著作権的な教育もされていらっしゃいますよね。
かまだ:それは、クリエイターたちが契約がらみでしょっちゅうトラブルを引き起こしているからです。よくある例では、特定の会社に第1営業権を渡す契約をしてしまって、その会社を通さずには一切仕事ができなくなるというケース。法律の専門家を呼んで法律と契約の知識や著作権のトラブルの勉強会もやりました。とにかく、判子を押してからじゃなくて判子を押す前に相談してほしいと毎回言っています。
岡本:コンテストでも入賞作品に対して上映権などを条件にするところもあるので気をつけろ、と口を酸っぱくして指導するよい人が、かまださんなんですね。とくに個人作家を応援し続けているのには、何か理由があるんですか。
かまだ:私自身がもともとクリエイターになりたかった人間ですから、CGアニメコンテストの入選者を、大学のクラブの後輩のように思っているんです。CGアニメをみんなでつくる活動をしている1つのクラブの後輩たちなので、当然その活動は支援する、そういうイメージですね。
岡本 CGアニカップについて幾つか聞きたいんですけれども、ニコニコ動画でのCGアニカップの視聴者総数が10万人と、すごい数ですね。アニカップ自体があまり歴史がないのに一気に10万人集めたと聞いてびっくりしました。
かまだ:我々も驚きました。でも来年やったら今度は20万人かというと、そうじゃない。どんなに頑張ってもせいぜい12万人だと思うんです。なので、もっと多くの方々に見てもらうためには、テレビでやりたいと思っています。
岡本:テレビでは、今日アニカップで出たような暗いものとか、人がメッタ斬りにされるものとか出せませんよね。とんがっていたり、アーティスティックな作品が一番楽しいところなんですけれども、テレビだとやっぱり丸くなっていくんじゃないでしょうか。
かまだ:だったら、テレビ版とニコ動版では別のをやる。メディアが変わったら、チョイスする作品が変わることは当然あると思います。
岡本:私は、いいお客さんがいるといいクリエイターが育つと思って、クリエイター教育と併せて視聴者教育はやっていかなきゃいけないと思っているんですが、CGアニカップは、会場の拍手や声援のボリュームで評価を図るという観客による会場審査を取り入れるなど、オーディエンス教育を実践している感じがします。お客さん一人一人がジャッジメントをしなければいけないと思うことで、真剣に作品を見ますよね。
かまだ:どういうものが自分にとっていい作品なのか考えることが、結局自分がつくるべき作品の方向性につながるので、視聴者全員が審査に参加することはCGアニカップの1つの目標にしています。個々人による評価はものすごく重視していますが、その結果についてはわりとどうでもよくて、だから優勝チームの賞金もないんです。
岡本:うちの学校でも毎年1人1作品をつくるんですが、それに勝ち負けをつけるのは非常に難しいんですね。判断基準の問題もありますが、クリエイター自身、勝ち負けをつけられるのは嫌じゃないかと。
かまだ:そこはぜひ、次にもっといい作品をつくってやる!と思ってほしいですね。東京藝大の学生さんって我々から見ると、めっちゃ保護されているんですね。褒めているわけじゃなくて、このまま社会に出て大丈夫なのかと。それと同じで、比較されて負けたからやる気をなくすでは、社会じゃ無理ですよ。
岡本:最後に、好奇心が自分の原動力というところでまとめてくださったんですけれども、具体的な今後の予定というのは?
かまだ:30年やってきて、クリエイターの環境に関しては思い描いたことはだいぶやれた気がします。でも、1000人から1人の優秀なクリエイターを輩出するためだけじゃなくて、残りの999人の方も考えています。今までの映像文化は、プロから一般の人への一方通行でした。それが、もっと多くの人が映像を使って言いたいことを表現できるようになって、映像が相互コミュニケーションの手段になったとき、初めて映像の力が発揮され、新しい産業なり文化なりをつくっていくだろう、という未来を思い描いたんですね。だから、もっと子供のころから一般の人たちがCGアニメに慣れ親しんでもらえるようなプロジェクトに、今後は力を入れて行きたいと思います。
岡本:日本全国の短編映像アニメーションのディレクターはみんな同じサークルの先輩後輩ということで、今日は全ての謎が解けたような気がしました。ありがとうございました。
|