2018.12.21

ピエール・エベール講演とパフォーマンス

2018.12.21

ピエール・エベール講演とパフォーマンス

カナダのモントリオールから来日されているピエール・エベール氏の作品上映と自身による解説とライブパフォーマンスを馬車道校舎のホールにて開催した。
ピエール・エベール氏は、1960年代ノーマン・マクラレンからフィルムスクラッチ(シネカリ)の技法を学んで以来、カナダ国立映画制作庁などで短編を制作、またステージ上で映画を創り上げる「フィルム・スクラッチによるパフォーマンス」で知られる、現代のカナダの実験アニメーション界をリードする監督。
今回の映像ライブパフォーマンスは、フランスのルーブル美術館などで公演されたものを特別に映像研究科で再演する。16ミリ映写機2台を使い、ループに繋げた16ミリフィルムにライブでフィルムスクラッチを行っていく。フィルムスクラッは、黒く現像した16ミリを削ることで白い光の痕跡が描かれる。制御と制御の不能性は、混沌を生み出し、本学助教の松本祐一による映像の変化にプログラムでリアクトするトイピアノ、木琴、ピアニカ、打楽器のライブ演奏と共に約1時間の上演は、常に増殖と変化を繰り返し、映画の限界に立っているような体験だった。
山村浩二

12月20日(水)
12:30~15:30 作品上映と講義
馬車道校舎 大視聴覚室
通訳:イラン・グェン

16:15〜17:15 映像ライブパフォーマンス
馬車道校舎 ホール
音楽:松本祐一


ピエール・エベール(Pierre Hébert)
1944年カナダ・モントリオール市生まれ。
1962年にノーマン・マクラレンと知り合い、フィルムの乳剤に直接に絵を刻む技法を知る。その衝撃から版画も学び、実験映画の道に進む。
1965年、人類学でモントリオール大学卒後、1965~99年、国立映画制作庁(NFB)でアニメーション映画監督務め、1997~99年はプロデューサー、フランス語制作部の責任者も兼任。2000年より独立した形で活躍中。
1965~1971年には『オップ・ホップ-ホップ・オップ 』、『作品3』、『幻惑』、『遺伝学入門抄』など、知覚を巡るを作品群を発表。その後、社会的・政治的意識を反映した『戦争の記憶』などを経て、音楽家、振付師、小説家などとともに、他分野との共同創作活動に力を入れる。1996年には長編アニメーション『人間植物』を完成、公開。
1986年からフィルム・スクラッチ・パフォーマンスを開始し、2001年からは米国の音楽家ボブ・オスタータグとともに展開する「Living Cinema」と称した実験ではパソコン技術も導入。
2005年より「場所と記念建造物」シリーズ(lieuxetmonuments.net)を構想し始め、様々な場所を取り上げた実験映像を制作。
2009年より日常的に絵を描着続けており、その出版や展示も続けている。
モントリオール美術学校(1968年)、ラヴァル大学(1974~78年)、モントリオール大学(1975~78年)で教鞭を執る。同時期に数多くの制作ワークショップも開催。
1993~95年、シネマテーク・ケベクワーズ会長。
1960年代から映像やアニメーションを中心としたテーマで記事や論文も長年の執筆活動で、様々な媒体への寄稿や自らのブログで仏英領言語での発表をはじめ、「天使うと自動仕掛け」、「身体、言語、技術体系」といった論文集もフランス語で出版している。
1988年には第一回「ノーマン・マクラレン遺産の賞」、2004年にはケベック州政府の映画功労賞「アルベール・テシエ賞」を受賞。
2010年にバンクーバーのエミリー・カー造形芸術大学から名誉教授の称号を受け、2018年には同大学から名誉博士号を与えられる。
https://pierrehebert.com/en/