平成27年度ASEAN文化交流・協力事業(アニメーション・映画分野) | » Home

背景とねらい

 タイはASEAN諸国の中でも特に日本のアニメが親しまれている国の一つであり、アニメ制作会社の海外契約件数(放映、上映、ビデオグラム、配信、商品化など)でみても、2014年の調査ではタイは韓国、米国、台湾、中国、カナダに次ぐ6番目を占めており、ASEAN諸国の中でもシンガポールやマレーシアの3倍以上の契約件数と抜きんでている。

 アニメーション分野においては、歴史的に日本とタイの関係は深く、タイ国内最大かつ最古の映像制作スタジオとして知られるKantana GroupのKanata Animation Studiosは、元々日本の東映アニメーションの下請けとしてはじまった会社である。同社はその後、3DCG制作にシフトし、2006年にはタイ初の長編アニメーション作品『Khan Kluay』を制作。その後も2本の長編作品とTVシリーズを制作している。

 一方、人材育成の側面からは、近年、国立のSilpakorn Universityをはじめ、各地の大学でアニメーション教育が行われるようになっており、上述のKantana Groupも、2011年にKantana Film & Animation Instituteという教育機関を設立している。これらの教育を受けた若者たちが、今後、タイのアニメーションを活性化する可能性は十分にありうるだろう。

 こうした背景を踏まえ、本事業では、日本の商業アニメーションの第一線で活躍するアニメーターのチームをタイに派遣し、現地の若者たちに「アニメーションで表現すること」の基本を体験的に理解してもらう実践的なワークショップを行った。

 カリキュラムや指導方法は、平成24年度から文化庁のメディア芸術分野における国内事業の一つとして実施してきた『アニメーションブートキャンプ』をベースにしている。小手先の技術指導ではなく、アニメーターとしての土台をつくる根本的な教育を目指し、熟練した日本のアニメーター達の表現に対する情熱や、プロの表現者としての基本的な考え方や姿勢を間近に伝え、現地の若者たちを触発するとともに、日本のアニメーションに対する理解を深めてもらうことを目指した。

実施体制

日本側
講師 京極義昭(アニメーター、アニメーションディレクター)
後藤隆幸(アニメーター、キャラクターデザイナー/プロダクション・アイジー)
佐藤好春(アニメーター/日本アニメーション)
ディレクター 竹内孝次(アニメーションプロデューサー)
布山タルト(東京藝術大学教授)
プロジェクトプロデューサー 岡本美津子(東京藝術大学教授)
プロジェクトマネージャー 江口麻子(東京藝術大学助教)
通訳 ルングトラグーン・ヌッシャナート(プロダクション・アイジー)
キアートチョクチャイクン・チャヤーニット(東京藝術大学)
企画・運営 東京藝術大学大学院映像研究科
全体統括 公益財団法人ユニジャパン
事業主任 前田健成(国際事業部情報発信グループ統括プロデューサー)
事業担当 本多麻由(国際支援グループ)
タイ側
現地協力 Silpakorn University
タイ側プロジェクトプロデューサー Akepong Tritrong(Dean of Faculty of Decorative Arts)
通訳監督 Chanisa Changadvech(Chair of Visual Communication Design Department)
通訳 Chaiyosh Isavorapant(Faculty of Painting Sculpture and Graphic art)
Chitchai Kuandachakupt (Product Design Department, Faculty of Decorative Art)
Pratimol Boonprachak ( Graduate Student, Faculty of Painting Sculpture and Graphic art)
Chanintorn Sookjaroen (Faculty of Decorative Arts)
Chotiwat Punnopatham (Visual Communication Design Department)
Atiwat Wiroonpetch (Visual Communication Design Department)
SUpitchaya Khemthong (Visual Communication Design Department)
Kanitta Meechubot (Visual Communication Design Department)
Sutasinee Vajanavinij(Visual Communication Design Department)
Mintra Assadathon (Visual Communication Design Department)
参加学生の所属校
Silpakorn University(シラパコーン大学)
    Faculty of Decorative Art
    Faculty of Information Technology for Design
Chiang Mai University(チェンマイ大学)
Kantana Film and Animation Institute(カンタナ・インスティテュート)
King Mongkut’s University of Technology Thonburi(モンクット王工科大学トンブリー校)
King Mongkut’s Institute of Technology Ladkrabang(モンクット王工科大学ラートクラバン校)
Mae Fah Luang University(メーファールアン大学)
Mahidol University(マヒドン大学)
Rangsit University(ランシット大学)
Srinakharinwirot University(シーナカリンウィロート大学)
Sripatum University(スィーパトゥム大学)
University of the Thai Chamber of Commerce(タイ商工会議所大学)

講師プロフィール

  • 京極義昭 (アニメーター、アニメーションディレクター)

  • 後藤隆幸 (アニメーター、キャラクターデザイナー/プロダクション・アイジー)

  • 佐藤好春 (アニメーター/日本アニメーション)

実施概要

《事業名》

『アニメーションブートキャンプ 2015 ASEAN』

《日程》

平成27年12月19日(土)
平成27年12月20日(日)

《場所》

Silpakorn University, Wang Tha Phra Campus

《プログラム》

12月19日

9:30-9:50 :開会挨拶・オリエンテーション
9:50-10:10 :導入(パントマイムと歩きの観察)
10:10-12:45 :歩きの作画
12:45-13:30 :昼食
13:30-14:00 :歩きの作画講評
14:00-17:00 :チーム作画課題
17:00-17:30 :プロの制作物を見る
17:30-18:00 :中間講評

12月20日

9:00-12:00 :チーム作画課題
12:00-13:00 :昼食
13:00-14:00 :最終講評
14:00-15:00 :作品上映(『わすれなぐも』)
15:00-16:40 :質疑応答
16:40-17:30 :修了証授与と閉会式

《参加者》

人数:25人
参加者の所属:
Silpakorn University(シラパコーン大学)13名
Chiang Mai University(チェンマイ大学)1名
Kantana Film and Animation Institute(カンタナ・インスティテュート)2名
King Mongkut’s University of Technology Thonburi(モンクット王工科大学トンブリー校)2名
King Mongkut’s Institute of Technology Ladkrabang(モンクット王工科大学ラートクラバン校)1名
Mae Fah Luang University(メーファールアン大学) 1名
Mahidol University(マヒドン大学)1名
Rangsit University(ランシット大学)1名
Srinakharinwirot University(シーナカリンウィロート大学) 1名
Sripatum University(スィーパトゥム大学)1名
University of the Thai Chamber of Commerce(タイ商工会議所大学)1名
※参加者のうち半数の12人は、Silpakorn Universityからタイ全国の教育機関に参加を呼びかけてもらい、各校の先生方から学生を推薦してもらった。

《使用言語》

 日本語・タイ語(逐次通訳) ※途中から適宜、英語への逐次通訳も行った

プログラム内容の詳細

《導入》

 ワークショップは、竹内ディレクターの次の言葉ではじまった。

 「2日間の体験を通じて何かを見つけてほしい。そのために大切なのは、あなたたち自身が問いを持つことだ。その問いを講師たちになげかけてほしい」。受け身ではなく能動的に関わってほしいというメッセージである。

 その後、京極講師によるパントマイムの実演と体験の時間が10分ほど設けられた。パントマイムは「動きのイメージをもつ」トレーニングとして大変わかりやすく、かつ身体を動かすことで緊張感をほぐすアイスブレイクの意味もある。

 パントマイムに続き、竹内ディレクターによる「歩きの観察」を促す10分ほどの短いワークショップが行われた。メトロノームにあわせて全員に歩いてもらい、その足の運びや歩幅を観察してもらう。事前に何人かの学生の靴に色テープが貼ってあり、そのテープに注目することで、脚の動きをじっくりと観察、理解してもらった。

《「歩き」のレクチャーとワークショップ》

 こうした導入を経て、アニメーションの作画ワークショップに入った。まず後藤講師から、歩きの作画の基本について講義が行われ、最初の課題として基本の「歩き」の作画課題が示された。配布された原画を元に、1〜2歩の歩きを描くという課題である。

 今回の参加者は、デッサン力がある学生は多いものの、アニメーションの作画経験にはバラツキがあり、基本的な歩きでもなかなか苦労する学生が多くみられた。しかし3人の講師が丁寧に指導を行い、最終的には昼までに全員が1〜2歩程度の歩きを完成させることができた。

 描いた絵は、『KOMA KOMA』というiPadアプリで撮影し、すぐに確認できる環境を用意した。講師はそれを一緒に見ながら具体的な助言や指導を行っていく。また、実際に講師が描いてみせる指導を積極的に行うのもブートキャンプの特徴である。

 最終的に全員分の歩きの課題成果をサーバーにアップロードしてもらい、『KOMA KOMA』の画面上で全てを一覧して見比べることができるようにした。講評では、後藤講師が事例をピックアップしながら、いくつか注意すべきポイントについて助言が行われた。

《チーム作画課題》

 「歩き」の課題を通じて、学生たちに原画から動画へという作画の基本を理解してもらった上で、今回のアニメーションブートキャンプのメインであるチーム作画課題(「箱」の課題)に移った。チーム作画課題は、以下のような内容である。

  • 配布された絵コンテに基づき、5人1グループで1本の作品をつくる。
  • 1人1カットずつ担当する。
  • 絵コンテの空欄部分(箱の中身と演技の部分)は学生たち自身が決める。
  • キャラクター設定資料を参考に、絵柄はラフでよいが頭身はきちんとあわせて描く。 

 登場人物は一人の男の子。その男の子が一つの箱をめぐってくりひろげる一連のアクションからシーンがなりたっている。

 箱の中身については、「スイカ」と「風船」の2つの選択肢を示して学生たちに選ばせた。最終的には全員で「スイカ」をモチーフとして課題に取り組むことになった。

 なお、この課題はもともと2011年に福岡で行ったアニメーションブートキャンプの前身にあたる『アニメーター育成プログラムテストケース』で考案した課題をアレンジしたものである。

《指導方法》

ブートキャンプの指導方法における、重要なポイントは以下の通り。

  • 学生たちが絵コンテをもとに演技を考え、自分の身体で実践してみること。
  • 彼らに明確な動きのイメージを持ってもらうこと。
  • 表現するポーズを見つけ出してもらうこと。

 技術的な作画の巧さや正確さではなく、そのもとになる方法論を理解してもらうことを重視する。

 実際の作画作業においては、3人の講師が担当するグループを観察しながら、必要に応じて指導を行う形をとった。指導に際しては、学生たちの動きのイメージを大切にしながら、それをどうやれば効果的に表現できるかについて、実際に講師が描いてみせながら助言した。講師が描く様子を観察する学生たちの様子は、あたかも師匠の技を盗もうとする弟子を思わせる真剣さであった。

 また、アニメーションブートキャンプが重視するもう1つのポイントは、「伝わる表現の追求」である。自分の動きのイメージを、しっかりと他人に伝えることが出来ているかを確かめるために、描いた絵を『KOMA CHECKER』というソフトで撮影し、アニメーション映像としてすぐに確認できる環境を用意した。『KOMA CHECKER』は後からのタイミング調整が細かく編集できるので、例えば動きが早すぎてわかりにくい部分に少し間をもたせるなど、「伝わる表現」へとブラッシュアップしていくことができる。こうした確認作業を、できるだけグループ内のメンバー全員で行ってもらうようにした。

 なお、こうした一連の作業について、各グループごとにタイ側のアシスタントスタッフがついて学生への指導をサポートしてくれた。彼らは主にSilpakorn Universityの卒業生達で、既にプロとして働いておりスタッフとしても非常に優秀で、大いに助けられた。

 最終的に「箱」の課題は、1日目の午後から2日目の午前中にかけて約6時間ほどかけて取り組んでもらい、全チームが無事に完成させることができた。中には1日目の終了後にも自主的に残って作画に取り組む熱心な学生たちの姿も見られた。

 最後の講評は、各グループの作品を大きなスクリーンで上映し、それぞれに対して講師からコメントする形で行われた。ユニークなアイディアや演技が随所に見られ、上映の途中にもしばしば笑いが起こっていた。

《プロの制作物を見る》

 学生たちに日本のアニメーションの仕事についてより深く理解してもらうために、実際に作品で使用された様々な資料のコピーを用意し、手にとって見てもらえるコーナーを一日目の終わりに設けた。

 資料は、後藤講師のはからいでプロダクションアイジーから借用したもので、平成23年度に文化庁事業の『アニメミライ』で制作した『わすれなぐも』という作品で使用されたものである。膨大な資料の中から10カットほどを選び、それぞれのレイアウト、原画、動画、タイムシートなどを全て見られるようにした。学生たちは目を輝かせて資料に触れ、それぞれの役割や書き方について、講師たちに質問していた。

 こうしたプロの制作物を見せる時間のねらいは、日本のアニメーションの制作工程を理解してもらうことはもちろんだが、それだけでなく、自分たちが取り組んでいる課題の延長線上にプロの仕事があるということを具体的にイメージしてもらうことをねらった。

《作品上映》

 課題を無事に終えてから、上述のプロダクションアイジーの作品『わすれなぐも』を上映した。あいにく日本語版での上映となったが、結果的にはそのおかげで、学生たちが必死に映像から意味を読み解こうと集中して観ていたように思われる。

《質疑応答》

 質疑応答は、3人の講師と竹内ディレクターを囲んで和やかな雰囲気の中で行われた。学生からは上述の『わすれなぐも』に関する質問の他、日本のアニメーション制作工程に関する具体的な質問(長編の制作期間はどれくらいか、1カットを何人くらいが担当するのか、1日の作業時間はどれくらいか、今も紙に描いているのか、使われているソフトは何か、等)が多くあった。

 また今後のデジタル作画への移行についてどのように考えているかという質問に対しては、各講師からアニメーターとしてのアナログへのこだわりが語られ、一方では竹内氏はプロデューサーの立場から、デジタル化の利点について具体的なエピソードを交えて語られた。さらには「背景美術スタッフにはどうすればなれるのか」「プロになるとどれくらい忙しいのか」といった、日本で働く希望を持っていることが感じられる質問もあった。

《修了証授与式》

 無事に全てのカリキュラムが終わり、最後に全参加者一人一人に対して修了証(下図左)が授与された。なお修了証のデザインと、学生たちに配布された小冊子(下図右)は、全てSilpakorn UniversityのVisual Communication Design Departmentのスタッフがデザインしてくれたものである。

アンケート結果

今回のワークショップは、面白かったですか?

非常に面白かった 68% (17) 
ある程度は面白かった 28% (7) 
あまり面白くなかった 4% (1) 
全く面白くなかった 0% (0) 
どちらともいえない 0% (0)

今回のワークショップで学んだことは、今後、あなたの制作の役に立つと思いますか?

非常に役に立つ 68% (17) 
ある程度は役に立つ 20% (5) 
あまり役に立たない 4% (1) 
全く役に立たない 0% (0) 
どちらともいえない 4% (1) 
無回答 4% (1)

今後、機会があれば、日本でさらに専門的なアニメの教育を受けたいと思いますか。

強くそう思う 76% (19) 
ある程度はそう思う 8% (2) 
あまりそう思わない 8% (2) 
全くそう思わない 0% (0) 
どちらともいえない 4% (1) 
無回答 4% (1)

今回のワークショップに参加して、日本のアニメに対するあなたのイメージに変化はありましたか?

あった 60% (15) 
なかった 24% (6) 
どちらともいえない 12% (3) 
無回答 4% (1)

「あった」とお答えの方は、どれがどのような変化かご記入下さい。

• はい、もちろんです!今回のワークショップでは、アニメの作成方法に感動し、また自分のアニメに対する印象が大きく変わりました。忍耐強く時間をかけることは、とても大変なことだと思います。
• 1つのシーンを作り上げるのに時間がかかり、忍耐が必要だと思いました。
• 日本のアニメにもっと興味を持ちました!自分にとって、とても為になりました。簡単に作ることが出来るものではないですが、アニメーターの方達が常に仕事に打ち込み、細かいところ1つ1つに力を注いでいるのだと思いました。最高のクラスでした!
• 日本のアニメがもっと好きになりました。
• 今回のワークショップは私のアニメに対する考えをより良いものにしてくれました。今回のワークショップで、自分の作ったものを他の人に楽しんでもらうことの喜びを学びました。自分の作品で他の人がもっと笑顔になってくれることが嬉しいです。
• アニメの分野で働く人達のことを今までよりもっと(前よりはるかに)尊敬します。
• フレームアニメーションをより理解出来ました。
• 予想より遥かに変わりました。
• アニメを作成することに対しての知識を得ました。
• 日本のアニメがもっと好きになりました。
• 今回のワークショップでは、アニメーターの方達がアニメにどれくらいの思いを注いでいるのかを学ぶことが出来ました。

今回のワークショップを通じて、日本のアニメに対する理解・関心が高まったと思いますか。

強くそう思う 56% (14) 
ある程度はそう思う 32% (8) 
あまりそう思わない 0% (0) 
全くそう思わない 0% (0) 
どちらともいえない 8% (2) 
無回答 4% (1)

今回のワークショップについて、感想やご意見を自由にご記入下さい。

• ここに参加出来たことをとても嬉しく思っています。全ての先生方がとても優しく接してくださいました。私たちは日本語を話すことが出来ないのに、先生方は出来る限りの説明をしてくれました。画像の描き方だけではなく、アニメを描く時にどの様に考えて、その考えをどのように描いていくかも教えてくれました。
• 最高のワークショップでした。とても楽しめました!
• このワークショップはアニメの基礎を育てるのにとても役に立つと思います。時間があまりないとは思いましたが、思っていたよりも良い結果になったと思います。
• とても良いワークショップでたくさんの刺激をもらうことが出来ました。
• とても楽しかったです。アニメ世界でのスターに会うことが出来て最高でした。ワークショップを毎年開いてほしいです。
• 先生方のご指導、ありがとうございました。
• 毎年タイでアニメブートキャンプを開催してほしいです。
• ぜひ若い世代の人達のためにワークショップを開催してください。
• 来年もぜひ開催してください。とても楽しいワークショップでした。
• このワークショップに参加出来たこと、またチームで色々な体験が出来て、とても良かったと思います。日本人のプロアニメーターの方達とお話が出来た初めての機会でした。
• このワークショップはアニメの分野に携わるタイの若い世代の人達にたくさんの刺激を与えることが出来ると思います。

まとめ

 タイは、マレーシアのような国家レベルでのアニメーション産業振興はなく、シンガポールのような欧米型のアニメーション教育が浸透している状況ではない。まだアニメーション文化・産業的に活発な状況とは言い難いが、10年前からすでに国産の長編アニメーション作品を制作するなど、その潜在的なポテンシャルは非常に大きい。しかしアニメーションの専門教育を行う大学や専門学校等はまだ少なく、アニメーション教育方法もまだ十分には確立されていない。

 こうした状況に対して、今回の事業では、実践的かつ基礎的なアニメーション教育を行うことが有効であると考え、これまで国内での十分な実績を持つワークショップ形式の教育プログラムである『アニメーションブートキャンプ』を実施することを試みた。

 こうした今回のアプローチは、参加学生や現地側スタッフらの好意的な反応をみた限り、大きな成功を収めたと言えよう。来年度もまた実施してほしいという継続を求める声も、参加者やスタッフから多く聞かれた。

 今回の反省点としては、タイ語で実施する上での通訳の問題が挙げられる。円滑な事業運営を行う上で、十分な経験とアニメーション分野の知識を持った通訳を確保することが今後の課題であろう。

 最後に本事業を成功させる上での最も重要なポイントを挙げるならば、それは現地での受け皿となる教育機関や企業等と信頼関係を結び、全面的な協力を得ることである。その点はタイに限らずどの国でも共通する課題だと言える。