平成27年度ASEAN文化交流・協力事業(アニメーション・映画分野) | » Home

事業目的

本事業は、日本とASEAN諸国の文化交流を大きな目的として、日本が強みを持つアニメーション、映画分野の専門家派遣を通じて、各国における日本文化理解の促進と、現地における映像文化の担い手の育成を目指す。

 昨今、社会全体が急速にテクノロジーへの依存を強めている中、人々の心の豊かさを育む土壌となるのはやはり文化であり、文化を耕すことができるのは人である。インターネットを通じて手軽に文化的な「情報」の交換は可能になったが、やはり人と人が顔を合わせて同じ場所の空気を感じ、より深いレベルで濃密な時間を共に過ごす「体験」とは代替不可能であろう。我々は今回の事業を実施するにあたり、現地の若者たちの人生における一つの礎石となるような、深いレベルの文化体験を提供することを目指した。

 具体的に我々が企画したのは、「共につくる体験を通じた文化理解」のプログラムである。日本のポップカルチャーはASEAN諸国でも広く受容されているが、それらがどのような人々によってどのようにつくり出されているかについて、「情報」のレベルではなく「体験」のレベルで理解している人は少ない。「共につくる体験」は、お互いを尊重し、やりたいことに耳を傾け、それをどのように実現していけばよいかを教え・教わる関係を築く。そこでの最終的な成果物がたとえささやかなものであれ、結果的に一人では生み出せなかったものがその場で生まれる現場を体験することが、様々な気づきを与えてくれるはずである。

 こうした考えを背景として、我々は、アニメーション、映画分野において、実際の制作体験に焦点化した文化交流のプログラムを企画し、ASEANの3ヶ国で実施した。具体的には、両分野において日本を代表する高い技術と経験を持った一流の制作者達を、マレーシア、シンガポール、タイの3カ国に派遣し、実践的なワークショップや、専門性の高いレクチャーを行った。それらを通じて各国の当該分野における人材育成に貢献するとともに、現地の若者達に、日本の映像文化を支える制作者達の高い技術レベルとその背後にある思想の深さを理解してもらうことを目指した。

 さらに、派遣講師と現地の教育機関関係者や、アニメーション、映画制作スタジオ関係者らとの間で意見交換の場を設け、これからのアニメーション、映画分野の優れた人材を、どのように国際的に育成していくべきかについて議論する機会も設けた。

 本事業をきっかけとして、日本とASEAN諸国の間で、アニメーション、映画分野における国際共同制作や、優れた人材をアジア全体で育んでいくための教育機関同士の連携が、今後さら更に活発に行われることを望む。*

事業構成

本事業の全体構成を以下に示す。

  映画分野 アニメーション分野
マレーシア 撮影照明ワークショップ  
シンガポール 映画マスタークラス アニメーション
マスタークラス
タイ   アニメーション
ブートキャンプ
2015 ASEAN

まず昨今、政府主導による映像産業振興が活発なマレーシアにおいては、今後の活性化が予想される映画分野に焦点を当て、シンガポールに隣接したジョホール地区に2014年にオープンしたばかりのPinewood Iskandar Malaysia Studios(PIMS)を拠点とした『撮影照明ワークショップ』を行った。

 一方、2015年に建国50周年を迎えたシンガポールでは、ここ10年程の間にルーカスフィルムやダブルネガティブなど、世界的な大手VFXプロダクションがブランチを設けており、映画分野とアニメーション分野が融合しつつある先進的なデジタル映像の分野において、今後の更なる活性化が予想される。そこで映画とアニメーションの両分野を行うこととし、内容的には専門性の高いマスタークラス形式のレクチャーを行うこととした。

 最後にタイは、アニメーション、映画分野ともに必ずしも活発な状況とは言い難いが、アニメーション分野において実は歴史的に日本との関係が深い。2006年にタイ初の長編アニメーション作品を生み出したKANTANA ANIMATION STUDIOは、かつて東映アニメーションの下請けとして始まったプロダクションである。こうした経緯も踏まえ、同国におけるアニメーション分野の更なる活性化に貢献すべく、本事業ディレクターの竹内と布山が2012年から国内で実施してきた『アニメーションブートキャンプ』という、第一線のアニメーターを講師とした実践的ワークショップを、初めて海外で実施することを試みた。

実施スケジュール

本事業の企画立案から実施に至る全体スケジュールは以下の通り。