令和元年度ASEAN文化交流・協力事業(アニメーション・映画分野) | » Home

事業目的

本事業は、成長著しいASEAN諸国に、日本が強みを持つ映画とアニメーション分野の専門人材を派遣し、現地の若者を対象とした実践的ワークショップを行うことで、人材育成に協力するとともに、日本の文化発信力の強化と国際文化交流を推進することを目的とする。

昨今、社会全体が急速にテクノロジーへの依存を強めている中、人々の心の豊かさを育む土壌となるのは文化であり、文化を耕すことができるのは人である。インターネットを通じて手軽に文化的な「知識」や「情報」の交換は可能になったが、やはり人と人が顔を合わせて同じ場所の空気を感じ、より深いレベルで濃密な時間を共に過ごす「体験」とは代替不可能である。

そこで本事業では「共につくる体験を通じた文化理解」に力点をおく。日本のポップカルチャーはASEAN諸国でも広く受容されているが、それらがどのような人々によってどのようにつくり出されているかについて、「知識」や「情報」だけでなく「体験」として理解している人は少ない。また「共につくる体験」は、お互いを尊重し、やりたいことに耳を傾け、それをどのように実現していけばよいかを教え・教わる関係を築く。一人では生み出せなかったものが、他者との協同作業によって生まれるプロセスを体験することは、参加者にさまざまな気づきを与えてくれるはずである。

本年度は、映画とアニメーションの両分野において、日本を代表する高い技術と経験を持った一流の制作者達を、マレーシアとタイの2カ国に派遣し、実践的な内容のワークショップを行った。それらを通じて各国の当該分野における人材育成に貢献するとともに、現地の若者達に、日本の映像文化を支える制作者達の高い技術レベルとその背後にある思想の深さを理解してもらうことを目指した。

事業構成

  映画分野 アニメーション分野
マレーシア ASEAN2019
デジタルシネマ制作
ワークショップ
in マレーシア
 
タイ   アニメーション
ブートキャンプ
2019 ASEAN

本年度は、昨年度に続きマレーシアとタイの2カ国でワークショップを行った。

昨今、政府主導による映像産業振興が活発なマレーシアでは、Multimedia Universityと日本の映画・アニメ制作会社のマレーシア現地法人であるOLM Asia SDN BHDの協力のもとで、撮影照明・美術・編集・録音という、映画技術領域全般を学べるワークショップ『ASEAN 2019 デジタルシネマ制作ワークショップinマレーシア』を開催した。講師を務めたのは、日本を代表する撮影監督、美術監督、編集技師、録音技師等である。受講生の募集は、東京藝術大学大学院映像研究科が構築してきた大学間ネットワーク、OLM Asia SDN BHDの独自のネットワーク、国際映画テレビ教育連盟(CILECT)のネットワーク等を活用して行われ、最終的にASEAN諸国7カ国(マレーシア、ブルネイ、インドネシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)から18名の学生が参加し、さらに東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻から学生3名がアシスタントとして参加した。

一方タイでは、ディレクターの竹内孝次と布山タルトが2012年から文化庁事業の中で実践してきたワークショップを海外向けに発展させた『アニメーションブートキャンプ2019 ASEAN』を実施した。日本のアニメーション業界で活躍するトップクラスのアニメーター達を講師として、アニメーションで表現することの基本を教えるプログラムである。会場はバンコクの西に位置するナコーンパトム県にあるSilpakorn UniversitySanam Chandra Palace Campus。本年度は5年目の開催となり、過去の受講生達がサポートスタッフとして活躍するなど、継続的に開催してきたことの成果が実を結んでいる。また昨年と同様に東京藝術大学から派遣された6名の学生も参加した。