東京藝術大学 産学官アニメーション国際シンポジウム2015
ドラえもんは、「スーパーグローバル」になれるのか?
2015年2月15日(日)13:00-18:30(開場12:30)
東京藝術大学上野キャンパス音楽学部第6ホール
入場無料:事前予約不要
文部科学省スーパーグローバル大学創成支援事業
東京藝術大学 産学官アニメーション国際シンポジウム2015
ドラえもんは、「スーパーグローバル」になれるのか?
〜22世紀を見すえたアニメーション人材育成〜
これまで独自の制作プロセスや人材ネットワークによりユニークな表現を生み出してきた、日本のアニメーション。加速度的に進むグローバル化とデジタル化の流れの中で、我々は次世代に向けて何をすべきでしょうか。大学として、これにどう向き合えばよいのでしょうか。

企画、制作から配給まで、これまで日本のアニメーションは国内で独自に発展させたユニークな方法をとることにより成長してきました。企画の時点からグローバルマーケットを意識することは稀で、日本市場のみを意識して完成させた作品が、結果的に(いや幸運にも!)世界に受け入れられてきたと言っても過言ではありません。ところが、近年の日本経済の低迷とコンテンツマーケットのグローバル化により、日本国内だけを対象とするビジネスモデルに変化が生じてきています。また人材についても、少子化の影響や若者の就労意識の変化等により、日本の中だけで後継者を探し、時間をかけて育成することが難しい状況となりつつあります。一方、制作プロセスや配給のデジタル化は、アナログ的作業の多かった制作行程に大きな影響を与えており、デジタル化にどう向き合うかも日本のアニメーション界の大きな課題となっています。

東京藝術大学は、2008年に日本の国立大学で初めてアニメーションの専門教育・研究を行う専攻を大学院に開設し、アニメーション界を担うリーダーの育成に取り組んできました。以来多数のクリエイターを輩出し、数々の国際的なアニメーション映画祭で賞を受賞するなど、世界的にも高い評価を得てきています。そして本年度、文部科学省の「スーパーグローバル大学創成支援」※対象校に選定され、アニメーション分野における世界トップレベルの大学等との交流・連携をこれまで以上に強化し、国際的に活躍しうるグローバル人材育成に取り組みはじめています。

こうした状況をふまえて、本シンポジウムでは文部科学省が提唱する「スーパーグローバル」という概念をアニメーションの文脈から捉えなおし、それを実践に移していくための具体的なアイデアや課題について議論していきます。

第一部では、韓国、中国、フランス、アメリカ、カナダのアニメーション関連の教育機関からゲストをお招きし、産学官によるグローバル人材育成の様々な試みについて事例報告とディスカッションを行います。

第二部では、日本のアニメーションをグローバルに展開しようとする際の制作・プロデュースにおける課題を洗い出し、それに対して大学として何ができるかを考えます。

今回のシンポジウムのタイトルに掲げられた日本の国民的キャラクター「ドラえもん」は、近年、3DCG映画化や米国でのテレビシリーズ放送など、時代の変化に柔軟に対応したグローバルな展開が注目を集めています。ドラえもんのみならず、ドメスティックかつユニークに発展してきた日本のアニメーションが、グローバル化を超えた「スーパーグローバル」な進化を遂げるために、本当に必要なことは何なのでしょうか。
我々はこのシンポジウムを、目先の利潤追求に囚われることなく、日本のアニメーションの次の100年、ドラえもんの生きる22世紀を見すえ、国境の枠を超えて産学官が協力しあい日本ひいては世界のアニメーション文化を活性化していくきっかけとなる場にしたいと考えています。
スーパーグローバル大学創成支援:
日本の高等教育の国際競争力向上を目的として、海外の卓越した大学との連携や大学改革により国際化を推進する大学に対し、重点支援を行う文部科学省による事業です。東京藝術大学は「グローバル化牽引型」に採択されています。
第1部:人材育成から見た「スーパーグローバル」
2015年2月15日(日)13:00-16:30(開場12:30): 日英同時通訳あり
「産学官連携によるグローバルな人材育成について」
これまで、日本のアニメーション界における外国人就業率、また日本のアニメーションクリエイターの海外進出率は極めて低い状態でした。しかし今後のアニメーションの発展のためには世界的に優れた人材を発掘していかなくてはならず、またそのような優れた人材を日本でも積極的に育成していく必要があります。グローバル時代における、コンテンツ制作者の教育はどうあればよいのでしょうか。シンポジウム第1部では、韓国、中国、フランス、アメリカ、カナダ各国のトップクラスの芸術系教育機関から、アニメーション教育に携わっている方々をお招きします。それぞれの学校での産学官連携による人材育成の取り組みについて具体例を交えながらご紹介いただいた後、全員でパネルディスカッションを行い、アニメーション教育の未来について意見交換を行います。
各大学での取り組みについてプレゼンテーション 13:00-15:40
1)東京藝術大学 / 日本 13:15-13:35
2)韓国芸術総合学校(K-ARTS) / 韓国 13:40-14:00
3)中国伝媒大学(CUC) / 中国 14:05-14:25
4)ゴブラン高等専門学校 / フランス 14:30-14:50
5)南カリフォルニア大学(USC) / アメリカ 14:55-15:15
6)センター・フォー・デジタルメディア(CDM) / カナダ 15:20-15:40
パネルディスカッション 15:50-16:30 司会:布山タルト
イ・ジョンミン
イ・ジョンミン
韓国芸術総合学校アニメーション専攻教授・プログラムディレクター、企画部門副学長
人文学を学んだあと漫画とアニメーションを専攻し、1993年よりアニメーション業界のメインストリームで制作している。デジタルアニメーション制作の方法を発展させ、多様なメディアにインディペンデント商業アニメーション作品を提供してきた。ユビキタス・テクノロジーは人々の身体と精神に向かって発展していると考えている。

2011年-現在 テレビシリーズ「Hello, Jadoo」プロデューサー
2012年 テレビアニメーションドキュメンタリー「The Way of Scholars」プロデューサー
2007年 ショートアニメーションフィルム「Maru’s Library」ディレクター
ガオ・ウェイファ(高薇華)
ガオ・ウェイファ(高薇華)
中国伝媒大学アート&デジタルアーツ学院アニメーション専攻主任教授・同学院院長補佐
中国科学技術部国家科学技術支援プロジェクトの中で責任者となり、「1993-2006中国オリジナルアニメーション産業報告」「日本アニメのアジアでの流通と影響」など多数の課題を発表し、コアな学術的雑誌にて論文を掲載している。2012年SARFT「アニメーション創作人材優秀賞」受賞。
2009-2013年プロデューサーを務めたアニメシリーズ作品「淮南子の伝説」が第27回中国テレビゴールデンイーグルアワード「テレビアニメ優秀賞」、中国文化部「中国アニメ優秀品質賞」、2011年度中国アニメーション学会「美猴賞・ベストシリーズアニメ」等、国家級の賞を受賞。大型クロスメディアアニメーション映画プロジェクト「マスター・ジャンとシックスキングダム」のプロデューサーも務める。
セシル・ブロンデル
セシル・ブロンデル
ゴブラン高等専門学校国際関係担当官、ゴブラン夏期講習プログラム統括課長
1992年パリ国立政治学院(Sciences Po)の博士部門卒業。1989~1995年は歴史の教師の傍ら、フランス国立政治学財団で客員研究員を務めてから、10年間に亘り英国の大学及び英・外務省で講師(フランス・ヨーロッパの文化・政治)。2006よりパリ国立政治学院などグランド・ゼコールで国際関係の担当官を歴任。2012年よりゴブラン高等専門学校国際関係担当官及びゴブラン夏期講習プログラム統括課長。
リピット 水田堯
リピット水田堯
南カリフォルニア大学映像研究科、比較文学・東アジア言語文化研究科教授
1964年米国コネチカット州生まれ。映画・視覚文化論、比較文学。サンフランシスコ州立大学、カリフォルニア大学アーヴァイン校などを経て、2005年より南カリフォルニア大学映像研究科および比較文学・東アジア言語文化研究科教授。城西国際大学メディア学部客員教授。著書に日本語訳『原子の光(影の光学)』(月曜社出版、2013年)門林岳史(翻訳)、明智準二(翻訳)、『エックス・シネマー実験映画・ヴィデオの理論から』(Ex-Cinema: From a Theory of Experimental Film and Video)(カリフォルニア大学出版、2012年)、『アトミック・ライト(影の光学)』(ミネソタ大学出版、2005年)、『エレクトリック・アニマル──野生動物の修辞学にむけて』(ミネソタ大学出版、2000年)など。
ラリー・バフィア
ラリー・バフィア
カナダ・CENTRE FOR DIGITAL MEDIA デジタルメディアプログラム教授
あらゆるメディアで表現するアニメーターおよび教育者。ストップモーションとクレイメーションから始まったバフィアのキャリアは、のちにCGIへと移行し、米PDI/ドリームワークス社の商用アニメーションディレクターとなる。同社作品「アンツ」「バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲」等ではアニメーター、「ミッション:インポッシブル2」「ピースメーカー」等ではエフェクトチームの一員も務めた。2002-2008年、バンクーバー・フィルム・スクールのアニメーション・VFX学科長。
布山 タルト
布山タルト
東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻教授
1990年代から3DCGアニメーション作品を制作。米国のカルトコミックを原作とした『FRANK』は文化庁メディア芸術祭優秀賞受賞、SIGGRAPHのElectronic Theater選出。2000年代からアニメーション制作デバイスの研究開発を始め、国内外の美術館や科学館で体験型展示やワークショップを行っている。昨今はコマ撮りアプリ『KOMA KOMA for iPad』等を発表。図工・美術におけるアニメーション教育プログラムの開発や、産学官連携による人材育成カリキュラム開発などの実践的研究に取り組む。
第2部:コンテンツプロデュースから見た「スーパーグローバル」
2015年2月15日(日)16:45-18:30
「日本アニメのローカライズ戦略について」
日本の商業アニメーション(アニメ)を海外のメジャーなマーケットに向けて展開しようとすると、開発当初から、グローバルに制作・販売を考える戦略(ローカライズ戦略)が欠かせません。アニメの中に登場する持ち物や食べ物から台詞のニュアンスやストーリーの構成、最終的にはコンセプトに至るまで、従来と異なる検討が必要となります。また、製作の観点からも予算設計、スケジュールや権利処理、契約等などを再設計していかなくてはならず、開発、制作のワークフローも大きく変わってくることが予想されます。
日本のマーケットの将来を考えると、グローバル化は避けて通れない道のように思えますが、上記のような大変革は、日本のアニメに何をもたらすのでしょうか。グローバル化のためにはどのような人材が必要とされており、どう育成していけばよいのでしょうか。また、グローバル化をめざすあまり、ファン層に熱く支持されてきた日本のアニメ「らしさ」を失うことにはならないのでしょうか。
第2部では、 様々な立場からアニメーションのローカライズに向き合ってきた専門家たちが、日本アニメのこれからについて議論を行います。
パネルディスカッション 16:45-18:30 司会:岡本美津子
海部 正樹
海部 正樹
Wowmax Media, LLC 代表業務執行社員 / CEO
1981年TBS入社、のちに内閣総理大臣秘書を務め、1992年WOWOWに移籍。ハリウッド・スタジオとの権利ビジネスにマネジメントとして携わる傍ら、アニメ事業部長に就任し、富野由悠季監督作品「ブレンパワード」やベストセラーSF小説「星界シリーズ」など、40タイトル以上のプロデュースを手がけ、衛星放送という新しいメディアにおけるアニメ・ビジネスを確立した。
2003年に、米ロサンゼルスを拠点とする、エンタテインメント事業会社「Wowmax Media, LLC」を設立。日米両国をビジネス・フィールドとするエンタテインメント開発とライセンシング・ビジネスをスタートし、スマートフォンアプリの海外販売向けマーケティング・サービス「Wow! Appli(ワウ!アプリ)」を展開中。また2010年にはプロデューサーとして、スタン・リー及びアニメ制作スタジオ「ボンズ」と共同で、最新スーパーヒーロー・アニメ「ヒーローマン」を制作、現在も新作アニメの開発を進めている。同時にアニメ、マンガ、ゲーム、音楽、テレビ番組、映画など日本のエンタテインメントの海外市場に関する市場調査と分析で多くの実績を積み、「デジタルコンテンツ白書」(デジタルコンテンツ協会)や「映像ビジネス白書」(キネ旬総研)などの執筆や、米国の大学などで講演も行っている。
南 雅彦
南 雅彦
株式会社ボンズ 代表取締役・プロデューサー
株式会社サンライズで「天空のエスカフローネ」「カウボーイビバップ」等の作品をプロデューサーとして手掛ける。1998年サンライズから独立、アニメーターの逢坂浩司、川元利浩と制作会社ボンズを設立。「COWBOY BEBOP 天国の扉」「鋼の錬金術師」「交響詩篇エウレカセブン」「ストレンヂア 無皇刃譚」「スペース☆ダンディ」など多くの作品をプロデュースしている。
竹内 孝次
竹内 孝次
アニメーションプロデューサ-
1976年日本アニメーション入社。テレビシリーズ「母をたずねて三千里」「未来少年コナン」「赤毛のアン」等の制作に携わる。1980年テレコム・アニメーションフィルムに移籍。「名探偵ホームズ」「じゃりン子チエ」「NEMO/ニモ」等を制作。元社長。2011年から2014年に亘り、産官学連携事業の「アニメーションブートキャンプ」のディレクターを務めたほか、現在は「アニメミライ」のディレクターも担い、アニメーション界の人材育成に注力する。2013年にはアニメーション教育研究のためパリ・ゴブラン映像高等教育学校で学ぶ。
西村 隆
西村 隆
公益財団法人ユニジャパン 事務局長
1950年滋賀県生まれ。神戸大学工学部建築学科卒業。
在学中より、神戸、大阪、京都にて映画製作上映活動を組織。
1982年にぴあ株式会社入社、ぴあフィルムフェスティバル・プロデューサー(PFF)に就任。PFFスカラシップ作品として園子温「自転車吐息」等を制作。1991年ぴあ退社後、インディペンデント・プロデューサーとして映画制作を開始。1992年「三月のライオン」(矢崎仁司監督、1993年度ルイス・ブニュエル黄金時代賞受賞)、1994年「冬の河童」(風間志織監督、1995年ロッテルダム国際映画祭グランプリ受賞)、1998年「20世紀ノスタルジア」(原将人監督、1998年度日本映画監督協会新人賞受賞)、2004年「きわめてよいふうけい」(ホンマタカシ監督)、海外との共同製作作品などを制作。1997年、日本映画の海外広報を目的とするNPO「ニューシネマ・フロム・ジャパン」を設立、代表。2000年より東京国際映画祭「フィルム・クリエイターズ・フォーラム」プロデューサー。2002年、財団法人日本映画海外普及協会、事務局次長に就任。2010年より公益財団法人ユニジャパン事務局長として現在に至る。
岡本 美津子
岡本 美津子
プロデューサー、東京藝術大学大学院映像研究科研究科長・同アニメーション専攻教授
1964年宮崎生まれ。1987年NHK入局。2000年,デジタルアート作品の公募番組「デジタル・スタジアム」、2003年「デジタルアートフェスティバル東京」などの番組およびイベントの企画,制作を行う。2008年東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻教授就任。2010年4月からNHKEテレで毎週月〜金放送中の「2355 」「0655」を企画、チーフプロデューサーとして制作中。2012年3月からNHK Eテレ「テクネ~映像の教室」の企画・プロデュース、NHKみんなのうたのプロデュースを行う。
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東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻
contact@animation.geidai.ac.jp